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2007年9月

第14号・地名(1)・砂の器

「亀」の付く地名を探しているのですがと訊ねると、松本清張の『砂の器』に「亀田」「亀嵩」が出てきますね、という話が多くの人から言われます。この小説は東京の蒲田駅近くの小さなトリスバーから始まり、そのバーに東北弁らしい言葉を話す二人連れの男が「カメダは今も相変わらずでしょうね」という言葉を残し、その翌日、そのうちの一人が他殺死体で発見される。この「カメダ」とは何か?を巡ってストーリーが展開され、人名「亀田」、地名「亀田」を追う。地名「亀田」は秋田県の「羽後亀田」ではないか、から始まり、結局島根県東南部の「亀嵩」が浮かび、事件解決に向かうという話しです。
地名辞典等で調べてみると、日本全国各地、北は北海道から南は宮崎県まで、45ヶ所の「亀田」があり、東北弁の北日本でも、青森、秋田岩手、福島など、多くの県で見られます。それが、わりとストレートに「羽後亀田」に辿り着くのはちょっと不思議な気がしました。北日本の地名「亀田」をチェックしてみると、
亀田郡      北海道渡島支庁
亀田町       〃 函館市
亀田       青森県五所川原市
亀田        〃 中津軽郡相馬村
亀田        〃 北津軽郡鶴田町
亀田       岩手県一関市
亀田        〃 平鹿郡増田町
亀田町       〃 由利郡岩城町
亀田山       〃 鹿角郡小坂町
亀田       福島県郡山市
などが簡単に目に付きます。上記でも、函館市には亀田本町、亀田港町、亀田大森町、亀田中野町などがあり、岩手県の岩城町にも亀田亀田町、亀田愛宕町、亀田最上町、亀田大町など、沢山の地名があります。
もっと不思議なのは、第六章・方言分布(この「砂の器」は全16章からなっている)の頭の部分に、『今西(この事件担当の刑事)は岡山県の地図を買ってきた。被害者三木謙一は、岡山県江見町の在だ。今西は地図の上でその町を中心に、目を皿のようにしてカメダをさがした。・・・今西はどきりとした。「亀甲」という文字が視野に飛び込んできたのだ。・・・今西は、さらに地図の上で、岡山県全体を入念に探したが、「カメ」の字の付く地名はほかに一つもなかった。・・・』と書かれていますが、私のリストでは岡山県内でカメの付く地名は30ヶ所もあります。今西刑事が買った地図は、もしかすると新聞紙見開き大の昭文社の18万分の1の分県地図だったのかもしれませんが、これなら確かに「亀甲駅」しか載っていなかったと思います。それならば理解はできますが、警視庁の捜査がこの程度の粗雑だとは思いません。私のような狂的なマニアには、ちょっと気にかかります。また、新聞記者の経験もあり、調査が非常に綿密であるとの定評のある著者が、地名辞典を確認されなかったのかなあ?と不思議に思う次第であります。もしかしたら、下調べのアルバイトさんがサボったのかな?
と言う訳で、以下に私のリストから、岡山県内の「地名・亀」リストをご披露します。
亀の甲     英田郡作東町
亀甲      久米郡久米町
亀甲      久米郡中央町
亀甲駅      〃    (JR津山線)
亀甲岩     津山市
亀ノ浦     和気郡日生町鴻島
亀ヶ原     邑久郡邑久町
亀井戸     備前市
亀居      笠原市
亀石      英田郡英田町
亀石      笠岡市
亀石      倉敷市
亀石神社    岡山市水門町
亀石川     英田郡英田町瀧宮
亀岩      岡山市水門町
亀座地     勝田郡勝北町
亀崎      倉敷市
亀山      岡山市
亀山      小田郡矢掛町
亀山      倉敷市
亀津      岡山市
亀島      恵庭郡落合村
亀島1~2丁目 倉敷市
亀島新田    倉敷市連島町
亀浜      岡山市
亀麓      小田郡矢掛町
砂留亀津    岡山市
南亀島     倉敷市水島
北亀島      〃
宝亀       〃 玉島勇崎

Photo

写真は、文中に出てくるJR津山線亀甲駅の駅舎の一部

如何でしたか?松本清張学会?でどなたか発表されますか? 

蛇足ながら。電話帳で見ると、この小説の舞台の島根県仁多郡仁多町亀嵩には2軒の「亀田さん」が居られました。「砂の器」に出てくる「亀甲駅」は平成8年4月9日に訪ねました。駅舎が何と亀の形をしているからです。屋根から巨大な亀の頭が飛び出した造りで、目玉の部分には時計が嵌め込まれていました。駅舎内には亀の置物があちこちに置かれていていました。当時の駅長さんは何と「野呂」(のろ)さんという女性で、五円玉数十個で作った亀を記念にとくださったり、岡山までの切符を、亀のスタンプを押した袋に入れてくださったり、何とも丁寧な扱いをしていただきました。五円玉の亀は、近所のおばさんたちが、亀甲駅発展のためにと寄付してくださるのだそうです。駅近くの中央町役場の広場には、亀甲駅の由来となった巨大な亀型の自然石が置かれていました。

さて、「地名辞典を調べろ」と書きましたが、実は地名辞典を調べても、地名を網羅することは出来ません。都道府県、市区町村の地名を調べるには、ごく普通の地名辞典でよいのですが、大字(おおあざ)、小字(こあざ)、村落、集落の現地での呼び名は完全では有りません。孫字(まごあざ)という言葉があるか否か知りませんが、精密な地名辞典でも拾われていません。また、市町村合併や地名変更も頻繁に行われていて、ちょっと前にあったと思う地名が無くなっていたりします。ましてや、明治時代、江戸時代、それ以前に使われていた由緒ある地名もどんどん無くなっています。

苗字の85%は地名から来ているという説があり、私の姓と同じ地名が有るか?と、地名辞典を見たところ、24ヶ所(1995年に調査)載っていました。しかし、その後、インターネットの検索や友人たちからの情報などで続々と見付かり、現在では53ヶ所にもなりました。現地に行って調べてみると、2~3軒の小さな集落であったり、山の中の人里離れた場所だったりで、地図に載せても載せなくても実生活への影響はほとんどないとは思いますが、現地では地名として存在しているわけですから、おろそかにして欲しくないと思っています。国土地理院の1/5000の地図上の地名の全てを網羅したCD辞典も出ていますが、結局大同小異でした。

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第13号・苗字の話の追加

このブログの第6号に「亀姓リストの終わりに」と題して、同じ漢字圏の中国の苗字についてご紹介しましたが、それがご縁で韓国の姓氏についての資料を頂きましたのでご紹介したいと思います。
朝鮮半島には約300種の苗字があると聞かされていましたが、今回2つの資料をまとめてみると、34
6種の苗字が確認できました。
目にした資料は『始祖・官職通覧事典』の「韓国萬姓族譜」(昭和48年7月1日、姓氏始祖研究所発行、金南完・著)〔以下「A」と云う〕と『朝鮮族譜データベース 姓氏・本貫分類番号一覧』(2003.3発行 編集:TSUJI Hironori&PARK ji young)〔以下「B」と云う〕の二種類で、Aには288種の姓族名が、Bには258種類の姓族名が書かれていて、重複を整理すると346種。1字名が328種、2字名が18種。三文字以上の姓は見当たりませんでした
朝鮮半島の苗字の特徴としては、日本で一般的に云う「苗字」ではなく、あくまで「姓氏」。一族の血族を表したもので、一族の創始者の出身地を表わす「本貫」、更にそこから分派した「宗派」が明確にされていて、同姓の本貫が共通だと、婚姻は禁止されています。例えば韓国姓で最も多い「金氏」には29の「本貫」と41の「宗派」があり、計55分類に分かれていました。
韓国での姓のベスト5は「金」「李」「朴」「崔」「鄭」とされ、この五大姓で人口の50%強と言われています。(この順位には2位と3位の「李」「朴」が、「朴」「李」と入れ替わっている資料もありました)
以下に、韓国姓ベスト50をご紹介しましょう。(左上から右に順位が降下、右下の「千」が50位)
金、李、朴、崔、鄭、姜、趙、尹、張、林
韓、呉、申、徐、権、黄、宗、安、柳、洪
全、高、孫、文、梁、裵、白、曹、許、南
劉、沈、盧、河、丁、成、車、具、郭、禹
朱、田、羅、辛、閔、兪、池、陳、巌、千

二文字姓は
皇甫、司空、東方、独孤、西門、南宮
諸葛、剛田、小嶺、森嘉、鮮于、石抹
乙支、赫連、公孫、扶餘、司馬、夏候
            
中国でも韓国でも「同族会」が活発に行われており、先祖代々にまで遡って一族の団結を大切にしているようですが、日本では一部を除いて趣味の同姓会しかありません。たまに同姓の人と会っても、所詮は赤の他人ということになっています。また、先祖を調べようと思っても、正しく遡れるのは精々五代前程度までしか確認できません。長老、お墓、お寺、戸籍を遡っても、大半が同程度です。とすると、現在の日本は、知らず知らずの同族結婚も多いのかな?中国人、韓国人から見ると、遠い先祖を知らない今の日本人は異様に感じられるかも。

これで、漢字圏の苗字についての全体のご紹介を終わりました。「亀姓」は日本だけで、中国・韓国には有りませんでした。

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